ギターによる純正律について
ギターは普通12平均律でフレットが打ってあります。ですので弦を押えて弾くと必ず12平均律の音程となります。
ギターを弾く人はほぼ知っていると思いますが、ハーモニクスというギターのテクニックがあります。
一般的には12フレット、7フレット、5フレットの弦の上に指先を軽く触れ、
ピッキングすると同時に指を離すと高い倍音だけが鳴る、というものです。
これは開放弦に対して、純正の音程でなっています。つまり、開放弦とハーモニクスだけ弾けば
純正音程で弾けるというわけです。
音律について解説は様々な本が出ていますが、大抵音程が分数表記してあり、なんのこっちゃそもそもの理論さへ勉強していない人には
難しいと感じます(私です)。
杉本拓著の楽譜と解説,*には古代ギリシャのフリジア旋法という
音律を弾く方法が記してあるのですが、やはり分数表記から始まってます。
が、そのチューニング方法はハーモニクス同士でチューニングして音程を導き出すというものです。
そこで、シンプルに考えて、
ただ単にハーモニクス同士を組み合わせて自分の耳で作ればいいのではないか?
という、ちょっと安易かもしれないですが、そういうやり方でなかなか美しく響くチューニングが出来ます。
というやり方をやっておりました。これで試行錯誤すれば、
ちゃんと自分の面白いと思えるようなチューニングを作る事はできます。
しかし、可視化できるとより音律の理解も深まり、
難しく作ってたつもりがただのオクターブだった!ということも無くなります。
分数表記について
実は理屈は結構簡単な話で、ハーモニクスの位置(第2ハーモニクス、第3、第4、5、6、7・・・)は
分節の数そのままです。つまり第2ハーモニクスは弦をナットからブリッジを2分割した位置にあります。
第3だと3分割した位置に4だと4分割した位置です。全ての分割位置で鳴るかは確認していないのですが、
鳴る場所はその分割された位置のみです。第3ハーモニクスを例に取ると3分割した位置にある
弦のナット側から最初の分割位置、ほぼ7フレットの真上が鳴る場所です。ハーモニクスの場合
仮に全ての分割位置で音が鳴るとすると、全て同じ音がなります。
第3ハーモニクスの場合弦の長さの1/3の長さで弾いたときの音が鳴ります。
その音の高さはhzで換算すると3/1、基音の3倍の高さが鳴ります。
他の位置についても同じです。
音の高さが解れば分数を掛け合わせたり割算したりして計算ができます。例えば
5弦Aの第3ハーモニクスと6弦の第5ハーモニクスを合わせて6弦の調律をするとします。
その場合5弦は3/1、6弦は5/1の高さで鳴りますが、その6弦の方のペグを回し5弦の第3ハーモニクスに
6弦第5ハーモニクスを合わせます。そうすると6弦の開放は3/1×1/5=3/5、で鳴ります。
元となる弦の方の高さをペグを回す方の弦の高さで割るわけです。
その仕組みは、、、ちょっと考えてもわかりません。{ややこしいですが、元の弦になる方の開放を1とします。
合わせる方の開放をxとします。元の方が第5ハーモニクス、合わせる方が第6ハーモニクスとすると、
1:5=x:6の式が成り立ち、計算するとx=5/6となる}もう1つ例を。
今度は4弦第9ハーモニクスに5弦第10ハーモニクスを合わせます。
元が第9なので9/1割る10/1、9/10です。さらにその状態で5弦の第5ハーモニクスに
6弦の第6ハーモニクスを合わせます。5/6に鳴ります。この場合4弦から見た6弦の高さはどうなるでしょうか?
この場合は5弦の高さ、6弦の高さを掛け合わせます。9/10×5/6=3/4。
、、、あれ?第10ハーモニクスとか第9ハーモニクスとか鳴らしにくい位置を使わずとも
これは先に4弦第3ハーモニクスに6弦第4ハーモニクスを合わせ、
その6弦第6ハーモニクスに5弦第5ハーモニクスを合わせた方が簡単ではないか!
、、という事に分数表記が出来ることで気づくことができます。
冒頭付近に記した通り純正で弾くにはハーモニクスと開放弦だけで弾く事です(あと合ってれば12フレット)。
フレットを押さえれば平均律の音が出ますので、開放やハーモニクスと混ぜればうなりは出ます。
ですがそこを逆手に取ったような奏法もできます。音律という「境界」を学ぶことによって、ギターの限界をしり
それによって限界を越えることが可能になります。
チューニング例
アルバムロの1曲目
5/9,A,8/7,5/4,2/1,9/4
*
杉本拓.楽譜と解説.サボテン書房,2018.
↓参考サイトとしてこちら。このページから純正律独習教本というpdfがダウンロード出来ます。
。
純正律独習教本
音律に関しての文献はたくさんあると思いますが、結構な名著が廃盤です。
平島達司. ゼロビートの再発見. 音楽之友社、1983
小島英幸. 音階入門. 音楽之友社、1996
藤枝守. 響きの考古学. 音楽之友社、1998
小方厚. 音律と音階の科学. 講談社、2007
西原稔. 数学と科学から読む音楽ヤマハミュージックエンターテイメント
ホールディングスゆージックメディア部、2020
など
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